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特集 「IT時代の建築設備設計/管理のゆくえ」 | |||||
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第10回目は、森ビル(株)常務取締役の多田雄三氏にお話を伺った。森ビルは、アークヒルズ、愛宕グリーンヒルズ、六本木ヒルズ等の都市再開発を進めている、日本有数の不動産会社である。 お話を伺った多田常務は、設計担当役員で、今回のインタビューでは、ビルオーナーとしての視点からと、建築並びに建築設備の設計者としての視点からお話をお聞きした。 IT時代に求められる設備設計者/技術者のスキルや、これからのビルマネジメントの方向性、デジタル技術のメリットについてなど、さまざまなお話を聞くことができた。 インタビューを通して、IT時代における建築設備設計/管理の方向性がはっきりと見えてきた。 |
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【 さまざまな設備がデジタルになっていく 】 | |||||
Q: インターネットをはじめとするITの普及によって、建築や建築設備の在り方は、これからどのように変わっていくとお考えですか? | |||||
『インターネットをはじめとするITの普及は、すでに建築設備にも大きな影響を及ぼしています。建築設備にWebという概念が入ってくると、ビルディングオートメーション(BA)はもちろん、ITVや電話、セキュリティなど、さまざまな設備がデジタル技術に置き換わっていきます。
設備の運用データがデジタル化され、そのデータをWebサーバで管理することは、建物の運用管理が大変やりやすくなるので、非常に歓迎すべきことです。 しかし、この技術の進展は非常に激しいので、どう捉えていくかが大きな課題です。 例えば、2003年にはデジタル地上波放送が開始となり、2012年には現在のアナログ放送から完全にデジタル放送へと移行される予定となっています。2003年以降の映像機器は、デジタル映像機器の時代になります。そこで、現在、ITV関係のWeb化に取り組んでいます。現在のデジタル映像機器の価格は大変高額ですが、2003年以降は需要と供給のバランスで、価格はどんどん安くなるとともに、高性能化していきます。従って、2003年以前に竣工するビルについては、価格も下がって高性能なデジタル映像機器が将来出て来ることを想定した設備計画を行う必要があります。しかも、その技術の進展の予測も含めた計画が求められます。このデジタル技術の進展の予測が、大変重要なのです。』 |
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【 求められる通信系の知識と技術 】 | |||||
Q: 設備がデジタル技術になっていく中で、設備設計や工事をする上で、どのようなスキルが必要ですか? | |||||
『デジタルの世界は、全く通信の世界です。しかし、設計事務所やゼネコンは、通信系の技術に弱いのが現状です。建築設備業界には、通信に強い人材が非常に少なく、いないと言った方が正しいかもしれません。これからの建築には、デジタル通信技術の方向性や可能性の検討が不可欠です。従って、通信系技術者が充実していないと、時代への対応ができないのです。
しかも、通信系の知識だけを持っているのではなく、建築設備の特殊性を理解していることが必要です。このような人材は、設計事務所やゼネコンだけでなく、デベロッパーにも必要です。 私どもは幸い、森ビルインフォメーションインフラストラクチャーという部門があり、通信系の人達が入ってきています。ただ、通信系の部門を持っていれば、優秀な人材が集まるわけではありません。やはり、明確なビジョンが必要です。夢を持たせないと、優秀な人材は集りません。』 |
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【 ユーザー主導によるBAシステムのオープン化 】 | |||||
Q: 設計事務所やゼネコンにおいて、通信に強い人材の拡充が待たれるところですね? | |||||
『先程お話しましたとおり、私どもには、通信系の人材が多数おります。私どもも待ってはいられませんので、自分達で実践をはじめました。その実践とは、ユーザー主導によるBAのシステム構築と運用です。
いままでのBAはベンダー主導でした。BAシステムはベンダーの独自技術として、非公開を前提に進展してきました。そのため、システムの内容をユーザー側は理解できず、システムの拡張性が低く、他社製品との相互運用性が低いという、クローズなシステムとなっていました。このブラックボックスな仕様であったことが第一の問題点でした。 また、BAシステムを導入する場合、他社製品との相互運用性が低いために、1社のベンダーに一括発注をせざるを得ませんでした。それも機器だけでなく、配線やエンジニアリングまでを含めてです。 そして、リニューアルの際には、新築時に導入したBAシステムに100%拘束され、リニューアル時にベンダー間でのコスト競争をさせることも不可能だったのです。このいわゆるコスト競争ができなかったということが第二の問題点でした。 このような、ベンダー主導によるBAのシステム構築と運用の「ブラックボックスな仕様」と「コスト競争ができない」という2つの大きな問題点を解決するのが、ユーザー主導によるBAシステムのオープン化です。』 |
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【 マルチベンダーでオープンなBAシステムの構築 】 | |||||
Q: 具体的には、どのようなシステムなのですか? | |||||
『BAシステムの中央監視に上がってくるデータは、ビルマネジメントに有効なものです。しかし、データは存在しているだけでは意味がなく、整理加工してはじめて活用できるのです。その整理加工するためのオフィースオートメーション(OA)と、いままでのクローズなBAシステムとは親和性がなく、オンラインでのデータ活用ができませんでした。従って、中央監視に上がってくるデータとOAをいかにオープンに繋ぐかが重要です。
この課題をクリアするために、森ビルでは、BAシステムの機能性・拡張性の向上とライフサイクルコストの低減を目指し、マルチベンダーでオープンなBAシステムを構築しています。具体的には、LON WORKS採用によるオープンシステムの構築を行っています。 LONWORKSは、LON(Local Oparating Network)を構築するためのすべてのモノ(ハード、ソフト、プロトコル、体制等)を総称する言葉です。 LONは、米国エシュロン社が開発したBA/FA分野の知的分散制御ネットワーク技術です。 LONWORKSにはインテリジェント分散制御ネットワーク技術が使われており、従来の集中型制御に比べ分散型制御は配線がシンプルで、故障による影響範囲が小さく、応答速度が向上するという利点があります。LONWORKSは、分散制御・集中監視を得意としています。 LONWORKSは、通信処理とアプリケーション処理を1マイコン化したニューロンチップを使用します。このニューロンチップを搭載した設備機器を使用することで、異なるメーカーの製品間においても、情報のやり取りが保証されます。従って、BAシステムにLON搭載製品として認定を受けた製品を使用すれば、短期間に、しかも安価に構築することが可能となります。 現在進められているメーカーも入った業界によるオープン化は、細部に至る相互運用性がどうしても低く、システムとしてオープン化が成し遂げられても、部分々々にクローズなものが残っていくと思われます。やはり、本来的なオープン化はユーザー主導によるマルチベンダーが必要なのです。』 |
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【 データ解析による最適運用の自動化を目指して 】 | |||||
Q: そうなると、本格的なファシリティマネジメントが可能となるわけですね? | |||||
『いままでのBAシステムの管理情報では、ファシリティマネジメント(FM)を進める上で、必要な情報が足りませんでした。もっと管理情報を多くしないと、FMはできないのです。 |
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【 最適運用による環境への貢献 】 | |||||
Q: 建物の運用に関する蓄積された数多くのデータと、データ解析ソフトがあれば、新しいビジネスチャンスが生まれると思いますが? | |||||
『私どもは、蓄積されたデータとデータ解析ソフトを利用した新しいビジネスをする気はありません。私どもは、最適運用の必要性を広く知らしめたいのです。ですから、蓄積されたデータやデータ解析ソフトなどは、どんどんオープンにして、みなさんに利用して頂き、最適運用の必要性を啓蒙したいと考えています。
ITの技術が進むと、さまざまなことがオープン化されていきます。IT化は、オープン化を推進するのです。オープン化することで、異業種から広く技術者が集まってきます。そして、優れた技術が短期間に開発され、リーズナブルに供給されるようになるのです。 また、建物の最適運用は、エネルギーマネジメントとなり、エネルギーの消費量の削減を実現しますので、大きな意味で、環境への貢献を果たします。最適運用の必要性の啓蒙は、環境への貢献を果たすためにも重要なのです。』 |
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【 異分野の優れた技術の活用 】 | |||||
Q: IT技術の進展の速さは、ドッグイヤーといわれますが、その中で採用する技術の検討はどのようにされているですか? | |||||
『ITの世界は、技術の進展が大変目覚しい世界です。ですが、無理をしてでも理解していかないといけない世界です。私も多少無理をしてでも理解し、勇気を持って導入のディシジョンをしています。
IT技術の進展は、大変目覚しいので、日々情報を収集し、どの技術を採用するかをきちんとチェックすることが重要です。 デジタル技術の世界は、オープンな世界です。従って、異分野で使っている技術を採用することが可能な世界です。ここがデジタル技術の素晴らしいところです。自分たち、あるいは建築分野ですべての技術を新しくつくる時代ではありません。異分野にすでにある優れた技術を使えばいいのです。 BAの世界ではあまり馴染みがないですが、ファクトリーオートメーション(FA)の技術には、大変優れたものがあります。いま私どもで採用している新しい技術のほとんどは、FAで開発された技術です。 例えば、FAの監視装置は、汎用のヒューマンインターフェイスをシステム構築者が汎用PCにインストールするのが一般的です。そして、その汎用ソフトはワールドワイドの商品で世界中に数万本出荷されているものも数多くあります。このFAのハード・ソフトを分離した環境をBAに導入し、汎用のハード・ソフトの調達をワールドワイドで行うことは、BAシステムの高機能化、低コスト化の進展に大変役立つものだと思います。 そして、どのIT技術を採用するかを判断する大きなポイントは、ワールドワイドな視点で、デファクト・スタンダードを捉え、それを流用していくことです。いかに優れた技術でも、汎用性のないものは採用すべきではありません。』 |
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【 設備設計者/管理者への期待 】 | |||||
Q: 最後に、これからの設備設計者/技術者への期待について、お伺いできますか? | |||||
『常に“現状打破”の精神を持って頂きたいと思います。この精神がないと、画期的なものには辿りつきません。建築設備業界に活用できる技術は、すでに異分野にあるのです。ですから、必ず“現状打破”ができるはずです。
デジタル技術の世界は、オープンな世界です。デジタル機器は、何用という業界特有という技術には閉じておりません。従って、これからの時代は建築設備業界もオープンで汎用性のあるものを開発していくべきです。 そして、リスクを負っても、勇気を持って新しいことに取り組んで頂きたいと思います。』 |
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LON WORKSの技術情報については、森ビルホームページ内「マルチベンダーオープンBA(http://www.openba.com/)」を参照下さい。
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