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特集 「IT時代の建築設備設計/管理のゆくえ」 | |||||
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第5回目は、NTT都市開発(株)常務取締役
事業企画部長の大貫東彦氏にお話を伺った。NTT都市開発は、東京オペラシティやアーバンネット大手町ビルなどの優良物件を有する、NTTグループの不動産会社である。 お話を伺った大貫常務は、建築設計の出身で、アーバンネット大手町ビルをはじめとする、数々の同社ならびにNTTグループの建築設計を手掛けられている。 今回のインタビューでは、ビルオーナーとしての視点からと、建築や都市の設計・開発者としての視点からお話をお聞きした。 設備設計者/技術者及び設備機器メーカーへの要望と期待、そして、今後の建築や都市の姿についてなど、これからの時代における設備及び設備設計の在り方を示唆する斬新なお話を伺うことができた。 |
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【 ITの普及による新しい建築・都市の姿 】 | |||||
Q: ITの普及によって、建築や都市の在り方は、これからどのように変わっていくとお考えですか? | |||||
『IT技術の進展は、産業革命に匹敵する価値があります。従って、ITの進展と普及によって、労働の仕方、そして、生活そのものが変わっていきます。
人々の生活や労働をサポートするのが建築ですから、ITで建築が変わるというよりも、ITの進展と普及により、労働の仕方や生活そのものが変わり、それによって、建築も必然的に変わっていくと考えています。 これまでは、建物の用途が明確でした。例えば、劇場ですとか、オフィスビルとか用途が決まっていることが前提としてありました。しかし、ITの普及により、これからは建物の用途が曖昧になっていくでしょう。つまり、これからは"フレックス建築"という考え方が必要となっていきます。建物用途が決まっていないということになると、外観も変わっていきます。以前でしたら外から見て、「これは劇場だな」とわかる必要がありましたが、これからは、用途が変わっても対応できる建築が求められるので、いままでとは逆に外から見て用途を決め付けられにくい外観になっていくと思います。"フレックス建築"とは、極端に言うと、骨組みがあって、内装はその建築の用途に応じて使用者側が施すような建築のことです。"フレックス建築"の時代になると、建築がもっと曖昧で透明になっていくと同時に、それぞれの街並みに独自のものが求められることになっていくのだろうと思います。』 |
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【 多目的な用途に応えた設備設計の必要性 】 | |||||
Q: 建物の用途が曖昧になる"フレックス建築"の時代になると、設備設計の考え方も大きく変わってきそうですね? | |||||
『いままでの設備は、クローズした空間で空気や電気といった環境を考えればよかったのです。例えば、劇場であれば、劇場のホールの空気や電気といった環境を考えればよかったのですが、その用途がもっと曖昧で多目的になって行った時に、室内空間の環境コントロールをどのように行っていくかが問われると思います。そういうあいまいな空間の環境のコントロールをどのように行うのかが今後の大きな課題になると思います。
その解決策としては、大きなエリアにセントラルな設備があって、そこから熱源を供給してコントロールするとか、或いは、設備が小さくユニット化されていって、用途が変わるたびにユニットを変えて環境を作り出すなどの方法が考えられますが、どのようにするかは、これから充分な検討が必要でしょう。 いずれにしても、多目的な環境のコントロールができるようにならなければならないと思います。もちろん、省資源、省エネルギーを実現する設備である必要もあります。』 |
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【 設備設計者の現状の課題とこれからのスタンス 】 | |||||
Q: そうなりますと、今後、設備の役割はますます重要になり、設備設計者のスタンスは、大きく変わる可能性がありそうですね? | |||||
『これからの設備設計者は、いままでのような受身ではなく、逆に提案していく側にならないといけないと思います。それぐらい建築における設備の比重は高まっています。しかし、現状としては、設備は建築の付帯設備であるという感覚が強いと思います。これからは、付帯設備という感覚ではなく、設備設計者がメーカーと協調しながら、設備が設計をリードするくらいのスタンスで、取り組むべきです。
それから、いままでの設備の設計図書は、意匠設計から見ると基本設計でしかないと思います。設備設計者は、現場で施工者やメーカーを相手に、詳細を指示しているケースが目立ちます。例えば狭い天井内でダクトと配管と構造躯体の取合いを検討できるような、立体や空間の感覚が重要です。立体や空間の感覚がある人とない人では、大きな差があります。これがあれば、数字を追うことのみだけでなく、空間や環境の設計意図を、感覚的にも把握することがより容易になるはずです。 また、設備の設計図作成の際に、採用する設備のメーカーが決まっていないと詳細が決められないという現状にも問題があると思っています。竣工後についても、設備の取替え時期にメーカーの都合で設備の大きさが変わっているために、収まりが悪くなるという場合もあります。この辺りは、メーカー間で規格の統一や標準化がされていないというメーカー側に問題があるのですが、設備設計者は、リニューアルがしやすいことと、設備効率を高めるための設計が求められておりますから、メーカーとともに解消すべき課題の一つだと思います。』 |
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【 設備メーカーへの要望 】 | |||||
Q: 設備メーカーに対して要望されることは? | |||||
『まず、メーカー間での規格の統一やさまざまな面での標準化を図って欲しいですね。「100年住宅」という言葉が見受けられるように、建物の構造やスケルトンの耐久性が伸びる中で、設備機器のライフサイクルやリニューアルが、今まで以上に問題になってきます。設備の取替え時期になって、他のメーカーの設備に変更したくても、大きさや配管の取出しなどの問題で変えられないということが起きています。また、機器制御の方法がメーカー間で異なると、違うメーカー間の機器やシステムにおいて、互換性や相互運用性が取れないというのも問題です。時代はオープン化へと突き進んでいる中で、いつまでもこのようなことでいいはずがありません。
それから、設備メーカー側から設備の使用者に対して、使用データを請求するなどの積極的な情報収集の姿勢が足りないのではないかと思います。設備メーカー側に、情報を元にニーズの高い機器を開発して、実用化しようという意識が乏しいのではないかと思っています。各メーカーが、設備の使用データをビル管理会社などから買い取って、実際の数値を元にした検証を行い、後追いではない、提案型の製品開発をして欲しいと思います。 建築設備機器と比べ、他の工業製品というのは、どんどん独り歩きをしています。設備を機器という観点でみると、建築設備も独り歩きするぐらいの意気込みを持った製品開発が望まれます。例えば空調は、水や空気を媒体とする方法から、基本的には変わっていません。いま、テレビはブラウン管からプラズマへと移行しようとしています。これは画期的な技術です。建築設備機器にも、テレビのプラズマに匹敵するくらいの技術開発を望みたいですね。』 |
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【 ユニット化の大きな可能性 】 | |||||
Q: 新しい建築設備製品・技術の開発が待たれるというお考えですね。その例として、お考えになっている技術があるのですか? | |||||
『これから建築は、もっと部品化していくと思います。その時に、設備まで一体化された製品、ユニットのような製品があってもいいと思います。例えば、壁にセットされた設備機器がその一例です。
ただ、ユニット化する時には、作る側の論理ではなく、使う側の論理で開発することが重要です。 ユニット化は、経済的な観点で見ると非常に合理的で、その合理性も評価できるのですが、合理性を追及するためだけのユニット化ではなく、ユーザーの利便性を重視したユニット化が望まれます。 従って、設備メーカーは、ユーザーのニーズをもっと把握する必要があり、ニーズに合ったユニット化であれば、建築が部品化に向う時代の流れの中で、評価されるのではないかと思います。 このユニット化は、建築の長寿命化が進む中で、それぞれ寿命が違う設備の部品交換を効率的に行うためにも、効果的です。ユニット化されていれば、建物を壊す時にもバラバラにはずせますし、再利用も可能となり、リサイクルの観点からも有効です。 環境配慮の観点からも、建築そのものを考え直していく必要がある中で、ライフサイクルを考えた上での部品交換は、非常に重要で、それを実現するユニット化は有効な手段になると思います。』 |
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【 テナントサービス向上のために望むこと 】 | |||||
Q: これからは、設備管理も注目されていきますが、ビルオーナーの立場で、どのようなことを望まれますか? | |||||
『貸しビル業は、価格の面でも常に競争していますが、価格の中には家賃とは別に共益費があります。共益費については、いままではざっくりした計算で、平均値的な単価を元にテナントに請求しているケースも見受けられます。これを個別に算出し、集計・分析・請求する仕組みが簡単にできたらと、考えています。共益費は、ビルオーナーが利益を頂くものではないので、公明正大さやオープン化を求めるテナントが増えています。』
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【 設備設計者/管理者への期待 】 | |||||
Q: これからの時代に設備設計者/管理者に何を期待されますか? | |||||
『いままでの設備設計者は、温度や照度などをどれくらいに保てばいいかという観点で設計していましたが、これからは、どのような設備にすれば空間や環境を管理しやすいのかという観点で設計すべきだと思います。そこにきめ細かい管理を求めているのではありません。逆に何かの設備が止まっても問題が出ないようなシステムを組んで欲しいと思います。
また、設備設計は、既成の製品を組み合わせているケースが多いと思います。一方、それにより生じる枠や制約にはまった設計をしがちではないでしょうか。単純な温度や照度設定だけを良しとするのではなく、例えば大空間の温度分布やダウンライトによる影の見せ方などアナログ的な側面に対し、環境を構築する技術を駆使して、建築設計をリードするような提案を期待しています。』 |
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