■ 特集「設備設計/管理 最新ITレポート」
第2回「CAFM(コンピュータによるFM支援システム)」
京都工芸繊維大学
繊維学部デザイン経営工学科教授 山口重之氏
(CAFM協議会・技術検討部会部会長)
(株)日建設計(CAFM協議会幹事会社)
東京本社設計室主査 榊原克巳氏
(CAFM協議会事務局長)
「設備設計/管理 最新ITレポート」の第2回は、「CAFM(コンピュータによるファシリティマネジメント支援システム)」をテーマに、京都工芸繊維大学デザイン経営工学科教授の山口重之先生と(株)日建設計設計室主査の榊原克巳氏に「CAFMα」についてのお話を伺った。
「CAFMα」は、大手設計事務所5社と大手家具メーカー6社等で組織された"CAFM協議会"が開発したシステムで、山口先生と榊原氏は、同協議会の中心メンバーである。
今回のインタビューでは、「CAFMα」の開発の経緯とその特長、そして、CAFMを活用した建築設備管理の課題と今後の可能性等について伺った。
インタビューを通して、建築及び設備のデジタルデータを有効活用するためのポイント、そして、FMを実践するための示唆に富むお話を聞くことができた。
CAFM(コンピュータによるFM支援システム)
1.「CAFMα」開発の経緯
2.データの永続性を重視したCAFMへ
3.FMを実践するには、Try & Errorが重要
4.ファシリティデータの30年保証
5.CAFMを活用した設備管理の現状と課題
6.目指すはオープンな環境で各自がやりたいFMを実施できること


【「CAFMα」開発の経緯 】
Q: 「CAFMα」開発の経緯を伺えますか?
CAFMαのバージョン1(以下Ver.1)は、1993年から開発がスタートしたものです。
1993年というと、ちょうど建築設計事務所に建築CADが定着してきた頃です。CADの定着により、図面はCAD化が一般的になりつつありました。そして、図面データの受け渡し、つまりCADデータ交換が大きな問題になってきた頃でした。そのような状況の中でCAFMを開発しようとしていたので、CADの二の舞をしないように、FMの世界でのプラットフォームとなるCAFMの開発を目指しました。
プラットフォームとなるためには、建築界の中心的な設計事務所数社の顧客企業に使ってもらうことが重要だと考え、CAFM協議会を立ち上げ、大手設計事務所5社が参加することになりました。この5社とも、そろそろCAFMを持ちたいと考えていたので、参加メンバーとなったのです。また、建物とインテリアという観点から、大手家具メーカー6社にも呼びかけ、大手家具メーカー6社も協議会に参加することになりました。大手家具メーカーはすでに各社別々のCAFMを持っていたのですが、FMの世界でのプラットフォームとなるCAFMの必要性から、協議会に参加したのです。
この協議会において、さまざまなディスカッションを行い、その意見をもとに開発したのがCAFMα Ver.1です。
CAFMαは、当初は主にオフィスビルのFMでの利用を中心に考えて開発をしましたが、決して家具やインテリアだけを対象にはしていません。

データの永続性を重視したCAFMへ
Q: 1993年の時点では、日本ではまだまだFMを実践している企業はあまり多くはなかったですから、1993年に開発したというのも画期的ですが、その時点で今日の重要な課題であるデータ交換の問題を考え、プラットフォームとなり得るCAFMを想定されていたというのはすごいですね。
1993年に開発したCAFMα Ver.1は、CADをベースにしたプラットフォームでした。つまり、図面情報と什器・備品等のファシリティ情報の連動を基本としていました。言い換えればCADがmustだったわけです。しかし、Windows95のリリースや、インターネットの急速な普及により、大幅なバージョンアップを余儀なくされました。そして、1996年に大幅な改良をしたCAFMα Ver.2をリリースしたのです。デジタル情報をもとにFMを実践するからには、CADはいらない場合があっても、データベースは必ず必要となります。FMを実践する企業のFM担当者の中には、図面情報がいらない人もいます。そこで、Ver.2では、既存のデータベースで構築したデータを利用できるシステムにしました。AccessやOracle8等の汎用データベースのデータを持っていれば、CAFMがスタートできるようにしたのです。
CAFMαの現在の基本構成ソフトはCADも使えますが、データベースをベースにシステムを考えていますので、CADがなくても汎用データベースだけでも使えるようなシステムになっています。つまり、データの永続性を重要視して開発しました。
CAFMαは、"あんこ"となることを目指しています。あんこをパンで包めばアンパンになり、もちで包めば大福になる。FMに関連したさまざまなことができるシステムなのです。つまり、大上段に構えて大掛かりなFMを実践するのではなく、部分的なFMを実践することができるシステムです。CAFMソフトは、独自のものを受託ソフトとして開発すると数千万円掛かりますが、CAFMαを利用すれば、データ作成費込みでも数百万円でスタートできます。

FMを実践するには、Try & Errorが重要
Q: 最近、"ファシリティは第5の情報資源"といわれ、以前よりFMに注目が集まっていますが、それでも日本ではFMを実践している企業・組織はまだわずかです。CAFMαは、このような状況を打破するツールになり得るのでしょうか?
ほとんどの企業が、ファシリティデータを持っておらず、どこに何がいくつあるのかがわかっていません。自社のファシリティのことを理解していない。従って、FMの目的や目標が作れないのです。CAFMαの利用によって、ほとんどの企業がFMの目標が定められないという状況を改善したい、そして、改善ができると考えています。
FMは、データづくりを始めることとデータベース構築が重要ですが、それよりもまずスタートすることが肝心です。FMは部分的にでもどんどん実践し、Try & Errorを重ねていくことがが重要です。実践することで施設の問題点や、自社で持っているいままでのデータが実際にFMでは使えるのか使えないのか等を理解することが大事なのです。自社のファシリティのことを理解できていない状況では、FMは小さくスタートすることが重要です。
組織のルールと仕組みができていないとFMはできません。逆にいえば、FMは組織のルールと仕組みができていれば、すぐにでもできます。従って、FMを推進するために、部分的にスタートして、Try & Errorを重ね、FMに関する組織のルールと仕組みを構築するのです。CAFMαは小さくスタートすることもできるCAFMなので、FMを広める最適なシステムだと自負しております。

ファシリティデータの30年保証
Q: クライアントがなかなかFMを実施することに踏み切れないケースが多いのですが、FMを実施するためのポイントをお伺いできますか?
大掛かりなFMを始めるには、莫大な時間とコストが掛かりますし、大きな枠でのFMを一度スタートさせたら、後戻りができません。部分的にスタートして、その分析データを経営層に上げて、FMに経営層を巻き込んでいくことが重要です。それから、施設全体からみて、細かすぎるFMはやらないように心掛けるべきです。
また、古い図面はスキャナで読んでラスターデータ化することを勧めています。デジタルデータにすると図面1枚数万円掛かりますが、ラスターデータの場合は、図面1枚数百円でできます。しかもラスターなら長くデータが持ちますから。建築の寿命を考えるとデータは、30年くらい使えるかが重要です。ですから、データは30年保証しなさいと設計者に言っています(CADデータの永続性を考慮した次世代のCADの標準的共有データ形式としてIAIによるIFC形式があり、来年度から実際にこれをサポートする既存CADが出てくる)。いまはクライアントがデータを管理していますが、これからは作った側が管理すべきです。なぜなら、ビジネスにもなるからです。
最近良く話題になるCMMS(Computer・Maintenance・Management・System)とFMは違います。FMという大きな視点で考えることも重要な要素です。

CAFMを活用した設備管理の現状と課題
Q: CAFMを活用した設備管理の現状と将来についてお伺いできますか?

これからは、ネットワーク環境の構築とユーザーオリエンテッドな考え方が重要です。そして、CAFMのデータがさまざまな場面で、いろいろな人達に役立つものであることが求められると思います。今後はCAFMについてもネットワークによるデータ共有をするようになっていくでしょう。何年、何十年に渡るデータが蓄積されメンテナンスされていれば、ファシリティのそれまでの流れがわかりますので、データベースやCAFMのデータを見なくては、建築・設備の企画や設計に入れないということになるでしょう。設計の企画段階で、クライアントと打ち合わせをする前に設計者がCAFMのデータを見に行くという時代になるかもしれません。そうなると、設計のプロセス自体が変わってくるでしょう。
設備については、ビルディング・マネジメント・システム(以下BMS)やビルディング・オートメーション(以下BA)等の設備のコントロールやセンシング(センサー利用)をするためのシステムとネットワークが、何年も前からできていますので、そこから先のIT化が重要となっていきます。
しかし、BMSやBAが導入されていても、そこの仕組みが現状ではブラックボックスになっています。メーカーが異なるとデータの互換性がない等、BMSやBAはクローズドなシステムになっています。現状では、せっかくBMSで設備のコントロールやセンシングをしているのに、そのデータがCAFMやデータベースに互換性のあるデータで受け渡すことが困難という、時代に逆行した仕組みになっています。インターネットの普及やグローバル化により、時代はオープン化が当たり前となっていますので、これからはBMSのメーカーがBMSのデータを標準的なデータ、互換性のあるデータにしていく必要があります。
現在でも、クライアントからBMSとCAFMをつないでデータを受け渡したいという要望が出る場合がありますが、現状では「それはやめましょう」と言っています。なぜなら、BMSの仕組みが現状ではブラックボックスになっていて、しかもCAFMへ渡すデータを要求した場合、標準的なフォーマットのデータ、つまり読み込み可能なデータは、BMSがコントロールしているデータよりすごく少ないデータしか出てきません。また、BMSとCAFMが直接つながるとBMSとCAFMは一体化して、万一BMSがシステムダウンした場合、CAFMもダウンしてしまうという大きなリスクを負うことになります。
現状で最も良い方法は、BMSのデータを標準的なフォーマットのデータに変換し、適宜フロッピーに落として、CAFMに持っていくという方法でしょう。今後、BMSとCAFMのデータ連動を図るためには、BMSのデータを汎用的なデータフォーマットのデータにしてデータベースやCAFMにつなぐ標準インターフェースの開発が必要となります。このインターフェース自体は、BMSメーカーが協力してつくれば比較的簡単に作れると思うのですが、BMSメーカーがつくらない場合、誰が作るかが問題になります。このインターフェースがあれば、設備のFM、ライフサイクルサポートは、実績値と平均値が明らかになり、データの連動が図れることで、飛躍的な発展を遂げるでしょう。
また、設備メーカーは、MTBFのような設備の平均故障率を出して欲しいと思います。このデータがあれば、設備保全管理の予測や設備のリニューアル計画がデータをもとに現実に近いかたちで立てられるでしょう。

目指すはオープンな環境で各自がやりたいFMを実施できること
Q: 最後に、CAFMαの最終的な目標と今後の課題及び展開についてお伺いできますか?

CAFMαの最終的な目標は、ファシリティに関わる所有者、管理者、設計者、利用者等のすべての人々に、ファシリティに関するさまざまな情報をオープンにし、各自がやりたいFMを実践でき、知りたい情報をすぐに入手できるための基本システムになることです。ただし、CAFMαだけでこれを実現できるとは考えておりません。CAFMには、多くのサブシステムが必要です。例えば、先程お話した建物の設備のセンサーからCAFMに実績値や平均値のデータを送るシステムもCAFMのサブシステムとなります。この他にも、CAFMを核にして、さまざまなファシリティ情報を送受信したり、分析するサブシステムができてくる必要があるのです。
一つのCAFMですべてのファシリティをマネジメントするのではなく、CAFMは機能を作りすぎず、単純なシステムであるべきです。CADについても同様のことが言えます。基本となる、中心となるシステムはシンプルで汎用性の高いシステムとし、そのアプリケーションやサブシステムと組み合わせることにより、全体的なFMができる。重要なのはデータの汎用性と永続性なのです。このような考えをもとにCAFMαは作られています。

1. CAFMα2000
初期画面
初期画面
2. CAFMα2000
検索結果表示画面
検索画面
3. CAFMα2000
スペース管理画面
管理画面

【 CAFM協議会の概要 】
会長: 鵜沢昌和氏(社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会会長)
副会長 兼 技術検討部会部会長: 山口重之氏(京都工芸繊維大学デザイン経営工学科教授)
幹事会社: 日建設計
参加企業: 日本設計、山下設計、安井建築設計事務所、バスプラスワン、イトーキ、内田洋行、岡村製作所、くろがね工作所、コクヨ、プラス

【 CAFMα2000発売元 】
兼松エレクトロニクス <http://www.kel.co.jp/>

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