■ 特集「設備設計/管理 最新ITレポート」
第6回「ECによる建築主のためのオープンマーケット」
CMnet運用協議会事務局長
森ビル(株)文化事業部
アカデミーヒルズ事務局長

礒井 純充 氏
「設備設計/管理 最新ITレポート」の第6回は、「ECによる建築主のためのオープンマーケット」をテーマに、CMnet運用協議会事務局長の礒井純充氏にお話を伺った。
「CMnet(シーエムネット)」は、インターネット上で建設プロジェクトの受発注を行うオープンマーケットで、本年7月頃に予定されている本格スタートに向け、現在CMnet運用協議会が検証や条件整備などを行っている。
今回のインタビューでは、CMnetの概略やこれまでの経緯、今後の予定、さらに、グローバル化の進展の中での建設プロジェクトの在り方などについてお伺いした。
インタビューを通して、ECによる建設プロジェクトの受発注の大いなる可能性が見えてきた。
ECによる建築主のためのオープンマーケット
1.CMnetの概略について
2.設立の目的と背景
3.CMnetの仕組み
4.発注者と受注者の守秘性を保持するセキュリティシステム
5.CMnetの現状
6.実証実験の成果
7.業界と参加者の反応
8.CMnetへの参加方法
9.今後の目標とCMnetの意義


【CMnetの概略について】
Q: まず、CMnetの概略についてお伺いできますか?
『CMnetは、インターネット上で建設プロジェクトの受発注を行う、“建築主のためのオープンマーケット”です。インターネットを活用した入札支援を行い、CM会社(コンストラクション・マネジメント会社)・建築設計事務所・積算事務所および施工者の選定や、建築資材調達のための入札システムをご提供するものです。
建設工事の発注方式に関して、いままでは、「一括発注方式(ゼネコン一括)」が一般的な方式となっており、その他の発注方式として「分離発注方式」、「コストオン発注方式」等がありました。ところが、近年の国際化の進展に伴い、建設生産プロセスにおいての透明性・効率性を求める社会的要請がますます高まりをみせており、それを受けて「価格と品質による競争」を実現する発注方式のひとつとして「CM(Construction Management)方式」が改めて取り上げられるようになってきました。
CM方式は、約30年ほど前から米国において公共工事を中心に採用されはじめ、世界に広まった手法です。このCM方式を採用することで、建築コストと内容、施工会社決定のプロセスが明らかになり、なおかつ、インターネットを利用してオープンな競争原理を取り入れることにより、質の高いものを安く実現することが可能になります。
CMnetは、CM方式、分離発注方式を推奨することにより、“オープンで透明な市場で、良いものを安く提供する”という仕組みを、インターネットを使って実現するものです。』

【設立の目的と背景】
Q: CMnetをつくられた目的をお伺いできますか?
『建築主は、質の高いものを安くつくりたいと考えています。これがまず一つの目的です。また、建築主は、コストダウンだけでなく、工数や手間も減らしたいと考えていますので、これを実現することも目的の一つです。そして、もう一つの目的は、建設プロジェクトの透明性を高めたいということです。近年、投資家を集めて建物を建設するケースや建設後建物を証券化して投資家に売却する等のケースが増えてきています。この場合、有効な投資かどうかのアカウンタビリティ(主体的説明責任)が強く求められます。それを投資した人達に説明する際に、この透明性は極めて重要となるのです。
それから、工事や規模、発注内容によって、ベストの業者を選びたいということも、大きな目的です。常時取引しているところが最善の選択とは限らないからです。
また、国際化の中で、自由で競争原理が働くグローバルな建設市場が求められているという時代背景も、CMnetをつくった大きな要因です。そして、建築主の発注形態が多様化され、その促進を図る必要性から、インターネット技術の急速な進展と普及という時代背景の中で、21世紀のデファクトスタンダードとなる日本型オープンマーケットを目指したCMnetが設立されたのです。』

【CMnetの仕組み】
Q: CMnetの仕組みについてお伺いできますか?
『まずはCMnet会員登録をして頂きます。登録頂くと審査があり、審査に合格した会社は入会となります。 CMnetは、建設産業に携わる企業すべてに開かれたマーケットですので、会員対象およびプレイヤーは、「建築主」、「CM会社(コンストラクション・マネジメント会社)」、「設計事務所」、「積算事務所」、「施工者(ゼネコン/サブコン/専門工事会社)」、「サプライヤー(メーカー/商社など)」になります。 入会した建築主は、案件を登録し各プレイヤーの参加を募ります。登録する情報は、敷地条件や建物条件などです。 CM会社・設計事務所・積算事務所などの選定をCMnetで行う場合は、各プレイヤー毎に入札を開催します。受注者側は、案件を見て入札ができます。入札は、分離発注もあれば、一括発注もあります。入札期間は、通常の建設プロジェクトと同様の3週間から1ヶ月程度が多いと思いますが、入札期間は発注者が設定しますので、期間は発注者次第となります。 発注者は、入札内容を見て、発注先を決定しますが、単に金額が安いところにするかどうかは、当然ですが発注者の判断によります。 また、CMnetには、プレイヤーに対して第三者機関の格付審査情報(経営面・技術面)を照会する機能があり、これを参照して、幅広いパートナーを選ぶことが可能です。格付審査情報とは、信用調査会社のデータや、施工実績に基づく技術情報などのことです。CMnetとして特に格付けを行うのではなく、第三者機関の格付審査情報を参照できる機能を用意しているということです。』

【発注者と受注者の守秘性を保持するセキュリティシステム】
Q: セキュリティについては、どのようになっているのですか?
『CMnetには、マーケットに必要なプレイヤー相互間での守秘性を保持するための画期的なセキュリティシステムが導入されています。
通常のサイトであれば、発注者と受注者がやり取りする金額が、サイト側の管理者にはわかってしまいますが、CMnetでは、それがわからない仕組みを実現しています。入札されたデータは暗号化され、サイト側は、暗号化されたデータをお預かりするだけなので、プレイヤー相互間での守秘性を保持されるのです。つまり、CMnetのデータベースは“貸し金庫”のようなもので、サイト管理者は鍵を持っていないので開けられない仕組みとなっています。
見積依頼から落札までは、発注者と指名業者間だけで情報をやりとりすることができ、他の業者はもちろんサイト側も金額などの情報には一切触れることはできないようになっております。
入札案件の物件概要情報は、当然のことながら入札開催通知から落札までのそれぞれのステップに応じた公開内容と水準が管理できます。特に「見積依頼」から「落札」までのステップにおいては、発注者と受注者の二者間のみで金額をはじめとする極めて重要な情報がやり取りされているため、CMnet側も情報に一切触れることができません。』

【CMnetの現状】
Q: CMnetの現状についてお伺いできますか?
『CMnetは、本年7月〜8月頃のスタートを目指しています。そのために、CMnet運用協議会を2月5日に発足しました。CMnet運用協議会は、伊藤滋先生(慶應義塾大学教授)を委員長に、学識経験者を中心とした委員と参加企業で構成されています。参加企業は4月12日現在で、267社となっています。当初100社程度の参加企業を予定していましたので、予想を大きく上回る関心の高さに驚いております。参加企業は、建築主、CM会社、設計事務所、積算事務所、ゼネコン、サブコン、専門工事会社、メーカー、商社、金融で、それぞれの主要企業のほとんどが参加されておりますが、中小規模の会社にも多数参加頂いております。 CMnet運用協議会の参加企業は、6つのユーザーズクラブに分かれて、意見交換などを行い、実用性の高い建設オープンマーケットの環境についての検証や、公平でかつ透明性の高いオープンマーケットに育てるための条件整備などを行います。 その活動の中でも中心となるのが、CMnetを利用した建設プロジェクトの受発注の実証実験です。すでにいくつかの実証実験を実施したり、予定しています。その一つのオフィスのリニューアル工事についてご説明しましょう。 物件は、都内にある約7,000坪のビルにおける、テナント撤去後の約2,000坪のリニューアル工事です。入札の種類としては、分離発注方式で行いました。 発注者は森ビルで、CM会社は、本来は外部の会社が望ましいのですが、実証実験ということで森ビルの内装工事部が担当しました。受注者側の参加企業は内装業者、電気業者など15社で、その会社規模は社員数7名から1,641名のさまざまな規模の会社に参加して頂きました。 今回は、最終的な落札は行わなかったのですが、受発注の作業手順コストの評価をしてみました。その結果、発注者、受注者双方の作業手順コストは、工事金額が約1億1千万円であったのに対して約7%程度のコストセーブが計れている事が分かりました。』

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【実証実験の成果】
Q: 参加者がCMnetのシステムにまだ不慣れな点を考慮すると、7%のコストダウンの達成は、大変な成果ですね。7%のコストダウンという数字は、どのような評価を元に算出されたのですか?

『この実証実験は、国土交通省の「中堅・中小建設業者向け電子商取引システム等開発研究事業」の一つとして行いました。また、CI-NETとの連動を検証するために、見積りのやり取りにはCI-NETを利用しました。
コストダウンの評価項目は、国土交通省が指定した「作業工数面」、「コスト面」、「時間面」の3つで削減効果を測定しました。「作業工数面」は、発注者が受注業者の企業評価に掛かる時間や、受発注者双方における見積りのため作業時間などです。「コスト面」は、図面や書類などのコピー代や、通信費、会議費などです。「時間面」は、「作業工数面」に含まれていない部分の労働時間の中で、想定した時間より浮いた時間のことです。削減コストは、次のようになりました。

  発 注 者 受 注 者 合   計
作業工数面 1,300,000円 5,404,000円 6,704,000円
  (32.5人/日×@40,000円) (131.5人/日×@40,000円)  
コスト面 453,980円 78,330円 532,310円
       
時 間 面 126,000円 373,500円 499,500円
  (42時間×@3,000円) (124.5時間×@3,000円)  
    総 合 計 7,735,810円

上記の単価も、国土交通省が当初より定めていたものです。
今回は実証実験ということで、ご指摘のとおり、参加者がCMnetのシステムにまだ不慣れな点がありましたが、その中で作業手順等だけで7%のコストダウンが図れたことは、CMnetの有用性が証明できたと思います。
今後、参加者がシステムに慣れていき、さらに工夫を重ねていけば、削減コストは、もっと増えると考えています。』


【業界と参加者の反応】
Q: CMnetに対する業界及び参加者の反応はいかがですか?
『建築主は、多くの良質な受注者を発見できる可能性やコストダウン、工数や手間の軽減、建設プロジェクトの透明性を高められるという理由等で、歓迎しています。ゼネコンは、多くの案件を容易に見つけることが可能になると考えておられます。特に技術力に自信のある会社はチャンス到来と捉えています。サブコンや専門工事業者さんは、参加者の中で最も期待値が大きいですね。先日の専門工事業者さんだけを集めた部会には、100名以上が参加されました。
業界の全般的な反応としては、時代の流れから必要、あるいは必然という感想が最も多いと思います。
それから、建築主の中で、マンションの管理組合が参加しています。実は当初はあまり参加を予想していなかった組織なのですが、マンションの管理組合は、住人の方々から預かったお金をもとにリニューアルなどを行うので、建設プロジェクトの透明性が非常に求められるので、CMnetの仕組みは非常に合っているのです。“ぜひやってほしい”というご要望を頂いてますので、4月〜6月頃にかけて、マンションの管理組合が建築主であるマンションのリニューアル工事の実証実験を行うことになっています。
この他、建築主からすでに10件程度、7月頃の本格稼動の前にCMnetを利用したいという要望が来ています。CMnet運用協議会では、順次行っていく予定です。』

【CMnetへの参加方法】
Q: CMnet運用協議会には、いまからでも参加できるのですか? また、費用などはどのようになっているのですか?
『CMnet運用協議会は、CMnetが本格スタートする本年7月頃までの協議会ですから、期間は6月末までとなっています。参加費用は、1社100,000円(消費税別)で、もちろん、いまからでも参加できます。実際に参加企業は毎日のように増えています。またCMnet運用協議会にお入りいただくと、優先的にCMnet株式会社の特別会員になれるような仕組にしております。』
Q: 本年7月頃に予定されている本格スタートするCMnetへの参加費用や規定は、どのようになっているのですか?

『CMnetの本格稼動以降の運営は、シーエムネット(株)が運営にあたります。シーエムネット(株)は、森ビル(株)とソフトバンク・イーコマース(株)が、インターネット上で建設プロジェクトの入札を行うことを目的に、本年3月に設立した合弁会社です。 CMnetの本格稼動以降の参加費用や規定などはまだ未定です。現在検討を進めているところです。』


【今後の目標とCMnetの意義】
Q: CMnetの今後の目標と建設プロジェクトをEC上で行う意義についてお伺いできますか?

『今後の目標としては、端的に言えば、CMnetが実際に使えるサイトになることです。良い発注者が発注して、優れた建設業者が参加して頂くことが、第一の目標です。地域とか、業種の枠を超えて参加して頂きたいと思います。
CMnetは、森ビルが発起人的なところがありますが、森ビルとしても、いろいろな人達と出会いたいために行うのです。ぜひ多くの会社に入って頂きたいと思います。
CMというと、一部のゼネコンさんにとって厳しいという印象を受ける向きもありますが、逆に発注者のレベルが上がることにより、ダンピング競争ではなく、合理性のある競争ができる可能性があります。そうなれば、発注者、受注者の双方にとってハッピーなことになります。
ECは、建設業界においても、導入が避けられない必須のものです。どうせ避けて通れないのなら、早く取り組んだ方が絶対にいいのです。ITは、先に取り組んだ人が多少の手間や時間さえ掛ければ、やっている人にしか得られない果実を得ることが多いのです。はじめに取り組んだ人は得るものも多いというものです。ぜひ多くの方々にチャレンジして頂きたいと思います。』

CMnet運用協議会のURL
http://www.academyhills.com/cmnet/index.html

CMnet株式会社のURL
http://www.cmnetcorp.com

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